2022/06/20 政治家対談Part. 1 池川友一さん(後半)
- 高校生支部 Voice Up Japan
- May 29, 2023
- 10 min read
こんにちは!Voice Up Japan高校生支部です。
今回は6月20日に行った池川友一さんとの対談の後半のレポートを紹介していきたいと思います。少し長くなりますが、ぜひ最後まで目を通していただけると嬉しいです。

1 校則問題に関して日本で校則の改訂を継続的に進めていくにはどのようなことが必要?
フランスでは小学校からクラス代表が校長と話し合いができる機会が設けられていたり、市民教育の一環として「子ども議会」が開催されたりしています。もちろん、高校でも生徒代表が高校生活に関わる議題について学校と議論することができます。
このような他国の現状を受けて、日本で校則の改訂を継続的に全国に広めていくにはどのようなことが必要か、池川さんに意見を伺いました。
池川さんは「校則決定の場所に若い人が参加できるようにすることが大事だと思います。子供たち、当事者の意見を聞いて何が必要か議論することが重要です。」と解答しました。
ここで池川さんは東京都内の都立高校の校則の見直しについて触れました。今年4月から施行されているこの見直しではツーブロックの禁止や「高校生らしい」という文言を校則に使用することを廃止しました。
画期的なアップデートですが、池川さんはこの改訂に子ども達はあまり関わっていない、と指摘します。
東京都教育委員会は校則の、見直しなどの際に生徒も交えて話し合う機会をつくるように学校に通達を出しているそうです。しかし現状は、形ばかりであったり、やったことにしている学校も少なくないとか。
子どもの権利条約の12条には
”締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する”
と記載されていますが、実際にはこのような権利は保証されていないと言えます。
これに際して、東京都は子どもの権利条約をベースにし「東京都子ども基本条例」を制定しました。池川さんはこの条例を普及させるためのパンフレット(子ども版)を作る際には、当事者である子ども達に何が必要なのか意見を聞きながら作っていきたい、と話しました。このようなことが進めば、政治や行政への認識も変わっていくのでは、とのことです。
池川さんは「子どもが校則改訂に関わっていくことがただ通達に従うだけの形ばかりのものにならないように、一歩づつ階段を登るように進んで行けたらいい。」と、この質問への回答を締めくくりました。
2 高校生の政治への関心や参加が低いのは学校での成功体験が少ないから?
高校生の政治への関心や参加度の低さは、生徒が校則改正プロセスなどの身近なルールメイキングに参加できないことにより、生徒の意見が尊重されなかったり自分の参加によって何かが変わったなどの成功体験が少ないことが原因の一つとして挙げられています。
池川さんはこのような現状が実際に関係しているとお考えになるか、ご意見を伺いました。
池川さんはまず、「すごく影響していると思います。チャレンジしたけれども身の回りのことが変えられなかった、という体験はその後社会に出たときに自分には変えていく力があるという実感を持てなくさせると思います。」と答えました。
池川さんが教えてくださった国立青少年教育振興機構が行った調査によると、「私個人の力では政府の決定に影響を与えられない」と回答した日本の高校生の割合がアメリカ、中国、韓国のなかでダントツに多いという結果が確認できます。
その割合は日本の回答者の中で83%にも登り、反対に「私の参加により変えて欲しい社会現象が少し変えられるかもしれない」と回答した高校生の割合は4カ国の中で最も少ない35.4%となりました。
この調査結果を受けて池川さんは「身の回りのことが変えられなかった、という経験がこのような結果につながっていると考えられると思います。」と続けました。
一方で日本の若者は「変えたいと思っているが変えられない」と思っているという現状もあると指摘されました。
日本の若者は「変えたいこととかありますか」と聞かれればこんなことを変えて欲しいと答えられるが、自分がアクションを起こすことで変えていけるという部分が問題意識から切り離されていると思います。これは日本社会の大きな特徴だと思います。これを変えるには自分が関与したことで状況が良くなった、などの少しづつの成功体験があるかどうかがすごく大事です。
一方で、池川さんはこのような「少しづつの成功体験」を作る場は学校だけでは難しいともおっしゃいました。
「この高校生支部のように団体で集まったり、いろんなレベルでの市民の活動に参加する中で自分にも変えられる力がある、と実感できればいいと思う。」
この質問の最後に池川さんはスウェーデンの若者と日本の高校生を比べて見ると面白い、と教えてくださいました。
政治への関心は日本の若者の方が高いのに対し、スウェーデンの若者は自分の一票に価値がある、と思っているので政治に関心がなくても投票に行くという傾向があるんだとか。
池川さんは「政治や行政に関心がある方がいいが、関心がなくても自分一票に意味がある、と思っている方が、主権者としては強い。政治への関心があっても自分の一票に意味がないと思っていたら、主権者としての力を発揮できないし、民主主義として機能しない。」と語りました。
現在、日本では若者の政治への関心を高めるためにさまざまなプロジェクトが行われていることがSNSでもよく見られます。このような動きは日本の未来を語る上で非常に大切なことだと思います。
しかし、若者により深く自分には周りのことを変える力があると気づかせるには、言葉で伝えるよりも実際に学校内でもそれ以外の範囲でも自分で何かを変えることができた、という成功体験を重ねる場が必要だと思います。
だからこそ、主権者教育の一環として学校内民主主義が実現され、生徒の声がわがままではなく意見として尊重されるべきだと心から感じました。
3 池川さんが若者に求めていること
池川さんは「個人が感じていること、大切にしていることを声に出して大人に働きかけて欲しい。若者だから、こう言わなくてはいけないと感じることは必要ないです。」と答えました。
ここで池川さんは子供の意見表明権についても触れながら、
「子供の意見表明権は子供の意見を大人が受け止めることが前提にあるべきだと思う。そして、大人は子供に発言する機会を積極的に与えることが必要だと思います。」と、若者が声をあげることと同時に、大人がそれに耳を傾けることが大切だと強調しました。
確かに振り返ってみると、普段大人と会話する時に高校生のステレオタイプに無自覚のうちに入り込んで、高校生らしいことを言わなくては、と思っていることもあるかもしれません。
周りの同世代と意見を揃え、同世代の代表、というレッテルを自分自身に貼り付け、意見を述べたりする。そんなことをするよりも自分の意見はなんなのか、ということをもう少し注視していきたいです。
周りと意見を揃えたり、多数派になる必要はなくて、
私はどう思うのか、何がしたいのか、をまず自分自身に問いかけることこそが、意見表明権を持つ高校生の私に必要なことだと感じました。
4 五年後に変わっていること
次のテーマとして伺ったのは、5年後、何が変わっていると思うか、という話。
実は今からちょうど5年前の2017年、荻上チキさんなどが先頭に立ち「ブラック校則をなくそうプロジェクト」をはじめました。その運動が一番のきっかけとなり、この五年間理不尽な校則に対する運動も盛んになってきました。
それでは、今から5年後。何が変わっているのでしょうか。
「5年あったら、めちゃめちゃ変わっているんじゃないかな -変えなきゃいけないのも含めてですけど- と思っていて。」
池川さんは、ツーブロック禁止の校則を全廃させるまでに活動を始めてから2年かかったといいます。それに対し、実際に校則を変えようとしている高校生は靴下に柄を入れることを許してもらいたい、カーディガンの色を一色増やしたい、という少しの変更の要望にすら1年や2年かけることもざらではありません。
ですが、その2年は中学生・高校生にとって学校生活の半分以上です。
長い時間をかけて変わるのはほんの少し。
もちろんそういった成功体験は嬉しいものですし、なくてはならないものですが、このままのペースだと遅くなってしまう一方です。
変わっていく速度を上げたいというのが、池川さんの考えです。先生方が許可をおろすというやり方ではなく、例えば生徒・教員・保護者で集まりを開き、そこですぐに決定を下すとか。教員・生徒間のやり取りのみの明確な道筋が見えないなかでの行動をできるだけ減らしていきたいと、池川さんはおっしゃいました。
そうしてシステム自体を変えていくことを考えると、これからの5年間で色々な物事の速度が速くなっていくでしょう。池川さんはそうなってもらいたいし、そうしていきたいとおっしゃっていました。
ちなみに…教育において子供の意見を尊重することは根本的に重要ということや、意見を表明しやすい励ましに富んだ環境を作ることが大切ということは国連においても議論されています。
(子どもの権利条約「一般的意見」より)
5 校則問題の解決に向けて学校現場で必要なこと
最後に、校則問題を解決するには学校現場でどのようなことが必要か伺いました。
私たちが今年の一月に意見書を提出し文部科学省の方とお話しした際に、「日本全国といっても何十万といる教員の意識を変えることは難しいので、生徒が主体的に声をあげていくことも大事にしてほしい。」という返答がありました。
教育現場には生徒対教員という敵対関係が多く見られる中、教員の校則問題について意識を高めるために研修を行うことなどの必要性も見えてきました。そんな中で池川さんは現場で変化をもたらすために必要なことは主に二つあると答えました。
池川さんは「子どもが声をあげないから変わらないというのは違う」と言います。
なぜなら、大人が気づいたときに子どもに声がけをして一緒に変えていく、ということもできるからです。子どもの権利条約にもあるように、「子どもの最善の利益」を考えるのなら、大人の側も変わらなくてはいけない、と池川さんは指摘しました。
池川さんは実際に都議会で教員が子どもの権利条約や東京都子ども基本条例を学ぶことの必要性について質問したことがあるそうです。研修の取り組みについての回答が多くあるそうですが、池川さん自身は形ばかりの研修で簡単に教員の意識は変わらないのでは、と懸念しています。
池川さんが考える現場での意識を考えるために必要なことの一つ目は、「教員養成課程に子どもの権利について学ぶことを組み込む」こと。これにより、学校で教員になる過程で子どもの権利について学び、しっかりとした認識を持って教員になることで学校現場で本当にこれでいいのか、と問題提起できるようにすることができます。
そして二つ目は「校長、副校長、教頭などの管理職が子どもの権利について学ぶ」こと。
子どもの権利条約の規定や学校現場でこれらを守ることの重要性などについての理解を深めればかなり現場の雰囲気を変えていくことができるのでは、と池川さんはおっしゃいました。
文科省が全国の学校で校則の最低ラインを決めたりすることは必要かもしれませんが、それぞれの学校が校則を決めることに変わりはありません。上から言われたことに従うだけでなく、アップデートの必要があると認識したら変えていけるようにする、このような環境を作るには管理職が子どもの権利についての理解を深め、生徒と教員間の対立ではなく対話を生み出せるようにしていくことが必要です。
池川さんは管理職の人々とこれから教員になる人の意識を変えていくことで校則についての問題意識を高めていけるのでは、とお話ししてくださいました。
以上、池川さんとの対談内容でした。今まで高校生支部のメンバー同士で話し合っていたことを政治家の方と直接意見交換することができて、とても実りある時間となりました。
高校生支部はこれからもたくさんの政治家の方々と対談を行なっていきます。インスタグラムでは質問も募集中ですのでぜひ気軽にDMを送ってください!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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